アンダーグラウンド
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2012/04/28
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1941年から始まった旧ユーゴスラヴィアの戦いと動乱の歴史を、マルコとクロという二人の男を通して描いた作品。41年、ユーゴ王国はナチス・ドイツに侵略された。クロを誘ってパルチザンに参加したマルコは、自分の祖父の地下室に弟やクロの妻などをかくまう。やがて重傷を負ったクロも地下室に運び込まれて……。95年カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。
数ヶ月前にTSUTAYAで発見して気になっていた映画。今回改めて探したら、なかなか見つからず、店員さんに探してもらった。よく内容も確認していなかったので、あきらめようとも考えたけど、観られて良かった。名作です。
映画の中で何度も何度もジプシーブラスが流れる、乗りが凄い。はちゃめちゃで破天荒、凄まじい勢いとバイタリティ、なんか人間の生命力が全面に出ていた。それでいてストーリーは凄く重い。セルビアへのナチスドイツの侵攻、パルチザンの戦い、その後のユーゴ内乱まで、非常に長期間を扱っている。全体が3時間近くあるのも、ある意味しょうがない。正直いうと、途中だれた。主人公のマルコが地下にクロ達を幽閉したまま、ナタリアと結婚して英雄になっている辺りがきつかった。「どうすんの、この後。真実を伝えられないじゃない!」っていうのがきつくなり、観ていられなくもなっていった。
けどそこからの展開には圧倒された。ナタリアの暴走から、マルコの見せかけの自殺、クロがアンダーグラウンドから出る、ここからはイヴァンに心を動かされた。イヴァンが地下道を抜けて(さすがにドイツからセルビアまでは繋がってないと思うが…)セルビアに着いたら、今度は内戦が始まっていた。そこにはマルコとクロが、違う立場で関与していた。「もう戦争はいいだろ!」と映画を観てることを忘れてしまうほど、本気で思ってしまった。そう、戦争はもういい…。マルコはイヴァンに殺され(ここはちょっと陳腐だったけど)、イヴァンは、自分がヨヴァンの結婚式のために作ったような教会で自殺してしまう。そしてマルコとナタリアは、何も知らないクロの指示によって殺害されてしまう…。パスポート?で二人に気づいたクロは、燃えながら動き続ける二人の遺骸が乗った車いすを止めようと試みる。
最後は、みんなでハッピーエンド。マルコに対して「許してやる、けど忘れないからな」と念を押すクロ。そう戦争がなければ、またはクロの妻が亡くならなければ、または…、みんな幸せになれたかもしれないのに。イヴァンが最後に言う
「苦痛と悲しみと喜びなしでは,子どもたちに伝えられない。昔あるところに国があったとは」
そう、そうなんだよ、ユーゴスラヴィアはそこにあったはず。確かに、自分を「ユーゴスラヴィア人」と思っている人は少なかった。けど人々が平和に暮らしていた…。けど、そこには苦痛と悲しみが積み重なってしまった。なんかそんな風に思ってしまった。オシムも未だに追っている。民族は違えど、みんなが仲良くできる国があるはずだと…。
ユーゴ内戦は知れば知るほど、誰が悪かったのかよくわからなくなる。ミロシェヴィッチは死んでしまった。セルビアは国際的に批判された。けど、これもボスニア側が依頼した広告代理店ルーダー・フィン社が関与してアメリカ世論が誘導された結果だ。内戦当時は、お互いがお互いを殺しあった、そこに誰が正義で誰が悪とかはない。監督のクストリッツァがセルビア系だとかも問題ではない。その国で生きた人、その国を思う人が、自分の感じたままに映画を作った。
溢れんばかりの生と、悲劇的な死、戦争の悲惨さ、祖国を思う気持ち…、言葉にするのは難しいが、まさに「当時」が映画に描かれていたのだと感じた。
- 作者: 坂口尚
- 出版社/メーカー: 講談社
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- 作者: 最上敏樹
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