教育改革の幻想
- 作者: 苅谷剛彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/01
- メディア: 新書
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「自ら学び、自ら考える力」の育成はとても難しいのに、学校の創意工夫という言葉でごまかす現行の学習指導要領はどうなんだろうとは思っていた。特に総合的な学習の時間については、各学校に専門の教員も送らず、教員に対する学習の機会すらほとんどない。こういう矛盾が現状を生んでいるのだろうと思った。
現在は高校で、昨年は中学校で指導していた。中学校では歴史的分野で世界史をほとんど扱わず、地理的分野では「記憶」よりも調査やまとめなどが重視されている。周りの先生が「身近な地域って題で学んだ考え方などを、他の地域にも適応させられるように指導する」と教えてくれました。ただ現実問題として、世界地理(例えば国や首都とか川など)は覚えなくてはならないと思うのだが。地中海すら覚えていない子に、いきなり世界史を教えるわけだから無理が生じる。ただでさえ覚える量が多いのに、世界史を中学校でほとんどやらないから知識の積み重ねもないわけで。
総合の理念は素晴らしいと思う。ただ金をかけないで、なんとかしようとするから無理なんだと思う。昔大学の教官が話していたが、「教育に金をかけてきたから、日本は繁栄できた。最近のインドや中国もそう。これから教育を節約するようになると、日本はダメになる」というのが現実になりそうで怖い。少なくとも、現在の中・高校生は「学力の高い子」と「低い子」の差がひどく進んでいる。