イスラームの世界観

イスラームの世界観―「移動文化」を考える (岩波現代文庫)

イスラームの世界観―「移動文化」を考える (岩波現代文庫)

ふっと見つけた本。イスラーム関連の本をぼおっと見ていたら見つけた。珍しく最近刊行された本だった。イスラームは誕生から国家の影響をあまり受けていない地域に誕生した。そのため、他の宗教とは異なり、政治性や経済性など国家の役割をも果たしていたんだと、授業では説明するようにしている。だからムスリムは宗教に帰属するんだと。「文明の衝突」にも書いてあった内容だが、それを「移動」というキーワードを用いて説明している。
第5話の「共存か共生か」で、内政不干渉の話がでている。果たして近代国家の基盤たるこの原則は、今でも通用するのか、「人道的介入」の話と絡めても、判断が難しい。ただ国家の形態については、変わっていかなくてはならないと改めて思った。この近代国家に代わる国家の形態としては、7C頃?からの東南アジアや神聖ローマ帝国の他に、イスラームもその一つだと思う。19Cに起こったパン=イスラーム主義の中心だったアフガーニーは、自らアフガン人と言ったりペルシア人と言ったりと、国にこだわっていない様子。もちろん西欧列強への抵抗という意味合いが大きいが、ふとフランス革命後のナショナリズムの影響を受けて、イスラーム的に宗教に帰属意識を持つようになったのではないかとも思ってしまう。
最近「スローライフ」とか「スローフード」とかの言葉を良く聞く。俺も自然と「ゆっくり」という言葉をよく用いるようになった。社会が流動的で変化が早いから、それに慣れるための学校があるという主張ももっともだと思う。がそうじゃなくても良いのではないかなとも思う。どうせ卒業したら、いやでも社会の流れに飲み込まれるんだから。この本を読んでいると、それをより強く思った。この辺の考え方は、養護学校的だなと痛感する。だけど「余裕」がなかったら楽しく生きることはできない。能力の高い人だけが「余裕」を作れるっていう社会はちょっとやだ。