これからの「正義」の話をしよう

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

 数年前にたくさん売れた本。ハーバード大学のマイケル=サンデル教授が授業で行った内容をまとめたものです。「正義」について、功利主義自由至上主義、カント、ロールズアリストテレスらの視点をもとに考察する内容。正義を求められる場面というのは、意外と多いことに気がついた。単純化すると、それが一層際だつ。「1人を殺した場合に5人が助かるとしたら、その1人は殺すべきか」というあまりあり得ないような問いだけでなく、「高所得者層に高額な課税をすべきか」という一般的なものや「傭兵と徴兵」といった政治的なもの、「アファーマティブ=アクション」、「過去の国家的犯罪に対する現在の責任」など、非常にシリアスな問いまである。それぞれの問いについて、様々な立場で意見を述べ、「正義とは何か」に答えようとしている。
 本書のような「本質」を問うこと姿勢は、現在の社会で保たれているだろうか。何かにつけて、その本質から目をそらし、その理由付けが行われている気がした。先日東日本大震災の三回忌でも述べたが、放射能被害を防ぐためには何をすべきか、その目的を達成するためだけの答えはもうでている。しかしいろいろな理由をつけて、そこから目をそらしている。または真剣にそれを防ぐ手だてを講じない。まさしく「正義とは何か」である。
 学校でも本質を問うことは疎んじられる。基本、めんどくさいと思われてしまうのだろう。我々は生徒に何を教えるべきなのか、我々はどうあるべきなのか、それは学校教育の根本。そこを酒の席でもいいから話し合い、考える必要があるのではないかと思った。