国家の品格

国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

大ベストセラーとも言うべき新書。だが特に目新しいことは何もなかった気がする。細かい部分で明らかに変な解釈とかをしているとこがあり、その辺りは問題な気がする。冒頭や末尾など、極端な偏りを持っているが、全体としては結局日本人らしさをもって世界を変えろってとこなのだろう。まあこれも無茶な論理であるが。
ただふと考えたのは、今の状況をどう捉えるかということ。私は右傾化していると考えていたが、彼はこの本の売れ方についてどう思っているのだろうか。一人一人のバランス感覚が違うので、それをどうこう言うつもりはない。ただそういうバランスを重視する人がたくさん集まれば、極端に左右にぶれないだろうと思った。この本を読むことで「祖国愛」について考える機会のなかった人は「祖国愛」という視点を得て右傾化し、「愛国心」に過敏になっている人はこれを読んでより左傾化して警笛を鳴らす。そういう意味ではこういった本が売れる世の中も悪くないかなとね。私は常々右と左の絶妙なバランス感覚というものを重視しており、中庸をモットーとしているつもり。国民は成熟しないというのも理解できるし、それは確かに歴史が証明している。しかし成熟していないが、退廃もしていないというのが俺の考え。アメリカ型の経済や社会システムが崩壊していると言われているが、それを批判しよりよく改善しようとしている人々もいるから。
さて脱線したが、私が問題としたいのは、これが新書として出版されているということ。「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」も新書でベストセラーとなったが、これも内容としては新書としてよいか疑問を持ってしまうほどの内容だった。この「国家の品格」も新書としての品格を兼ね備えているとは思えない。ぶっちゃけ買わずに立ち読みでも十分間に合う。私は岩波や中公新書を買うことが多いが、比較するのもはばかれるくらいだ。
  
国家の品格」を考える前に、著書の品格を挙げて欲しいものだ。