人道的介入

人道的介入―正義の武力行使はあるか (岩波新書)

人道的介入―正義の武力行使はあるか (岩波新書)

現在でいうとダルフールの虐殺をさすのか、今この瞬間も行われているかもしれない民族浄化や大量虐殺に対し、国際社会がどう介入すべきかを考えた本。正しい武力行使はあるのかという問題を多面的に考察し、人道的介入はどうあるべきかをまとめている。対立が激化する前から「和解」に向けて介入し、それでも止められなかったら武力行使の議論を行うべきだと述べていた。
「和解」とは難しいもので、南アメリカではアパルトヘイト後に「真実和解委員会」を設けて虐待の事実を明るみにした。被告は真実を語れば恩赦が認められるシステムとなっており、まさに「記憶に刻む」行為かもしれない。ミロシェヴィッチへの懲罰的な意味合いが見え隠れする裁判や、イラクフセイン元大統領の死刑という状況よりは、「記憶に刻む」行為のほうが対立は生まないかもしれない。もちろん他の方法も考えられなくてはならないが。
NHKSPの「映像の世紀−民族の苦悩果てしなく」で、悲劇的な現状を訴えていた。赤の他人を助けるためには自分の友人を戦場に送れない、命の重さは違うのではないかという現実である。ただ国際社会が守らなければ、発展途上国の人々の人権は守られない。歴史上先進国は、発展途上国を従属化してきた。それなら先進国の人々は、自分の命をかけてでも他国の人の人権を守る責任があるのかもしれない。