街場の教育論

街場の教育論

街場の教育論

教員が読むと結構元気づけられ、できるならたくさんの人に読んで欲しいと思う本。ここのところ読んでいる本に共通しているのが、現代社会の分析で「個人と社会の関係」が大きく変化しているという主張だった。これはまあ当たり前かもしれないけど、よほど新自由主義が人々の心を病ませているのだろうなと一層感じた。自己責任という言葉を受け入れられるほど、個人は強くないのだろう。そういう現状の中、「教師を支えろ」という内容はとても勇気づけられた。
ただもちろん全てを鵜呑みとは思いませんが。例えば「教育はサービスではない」といった内容。反面教師的にうまくいくことはあるだろうけど、それはあくまで生徒間のやりとりがうまくいっている学校で成立するんだと思う。世の中には境界線児とよばれる生徒が何人もいる高等学校もあるし、小学校低学年なんかでは反面なんか見せたらきれいに真似されてしまう。昔だったら保護者とか周りの教員とかがそれをサポートできたのだろうけど、「個人と社会の関係」が大きく変化してしまった今、それを期待することができない。私は、だから「教育サービス」という言葉が生まれ、先生方が自分の指導のあり方を考えるようになったと考えている。もしかしたら著者の知らない世界なのかもしれないけど、そこが少し不満でした。
「教育論の落とし穴」や「葛藤させる人」、「反キャリア教育論」などについては、同じような感覚を持っていた(もちろん著者のほうがそれはそれは深くですが)ので、結構勇気づけられた。やっぱり教員は「隙を見せない完璧さ」ではなく、「葛藤する人間」を生徒に見せるべきなのかなと改めて感じた。