ドキュメント高校中退

ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所 (ちくま新書)

ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所 (ちくま新書)

 ぞわっとした。田舎の底辺校より、都会の底辺校のほうがすごい。田舎の底辺校の下位層で学校ができている感じか。それはそれで指導しやすいんだろうけど、なかなか困難な様子だった。やっぱ高校で「教育(生活全般)」するって難しいんだと思う。就学前教育が今一番大事だ!
 貧困な家庭の子どもをどう社会で支援し、貧困の連鎖を防ぐか。自分が底辺校で働いたときに、一番感じた問題点がこれだった。教員としてどうこれを助けるか、実際にやったことでとりあえず浮かんだことは、

  • 「自分を優先させないこと」をしっかり教える。
  • 進学の場合、できるだけ大学に行かせる。

 1つ目は将来仕事をやめないため、といったところか。けどこれをやると校則を守れない生徒はいずれやめていくことになる。この本の著者は「高校を義務化すべき」と言っているが、私は反対だ。高校は「自らの意志で学びにきている」ことが前提。その前提があるので、生活が改善していく生徒が多数いる。もちろん結果的に中退して一層困窮していく生徒もいるが、だからといって改善する機会を奪うのは残念な気がする。私の力では、「自らの意志で」きているのに学校に残ろうとしない生徒を指導するのは難しい。
 2つ目は奨学金とかいろいろ使って…ということになるが、これはまずいよね。底辺校だとどうしても難易度の低い大学に集中してしまい、結果卒業してもあまりいい就職先がなさそう。
 結局、いい大学とか、いい会社を目指すこともできない人たちは、地域で受け入れるしかないんだよね。けどその地域経済が崩れつつあるから、貧困の連鎖が止まらないのかもしれない。田舎の底辺校は地域経済がある程度あるから、都会よりはましなのかなぁ。なんかあんまりいいまとめじゃないね。
 今、改めて考えると、別に「学力」だけが貧困から抜け出すための手段じゃない。「高校を中退させない力」、もうちっと広げると、「継続する力」があることが大切だと思った。これって全く今風じゃない。現代に合っていないものかも。けど、残念ながら貧困に陥るケースは「高校中退」や「仕事をすぐにやめる」ことから引き起こされる。なので高校入学までに、この部分をしっかり身につけさせる必要があるかも。もちろんこれだけじゃないけど。
 もちろんこの本が言うように、学力と貧困は相関関係にある。それは教員や保育士が痛感していること。けど学力を付けさせたからといって、貧困から抜け出せるとは限らない。それが昔と違うところ。
 やっぱどう考えても、学校で教えるのは「学力」以外が大事と思えてくる…。