ヒトラー〜最後の12日間〜
ヒトラー~最期の12日間~スタンダード・エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: 日活
- 発売日: 2006/11/10
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ヒトラーがベルリンの地下にこもってから自殺するまでの12日間を追っている。主人公は個人秘書だったユンゲという女性。実際の史実に基づいて作られているようだ。地下にこもってからのヒトラーの混乱と平穏、側近の人々の抵抗とあきらめ、ベルリン市民の様子などを、まざまざと描き出していた。ドイツではヒトラーを肯定的に描くことは不可能だろうが、1人の人間としてのヒトラーを感じることができた。また彼女(のちに結婚)だったエヴァの覚悟も。1人の男性としてヒトラーを愛していたと感じた。
「ヒトラーは人間ではない」とするのは簡単だ。彼は悪い意味で特別だったとし、自分とは違うと考えればいいだけだから。しかしそれでは過去を乗り越えたことにはならないと思う。彼も1人の人間で、少なくとも十数年は人々の心を奪っていたのだから。アーレントが「イェルサレムのアイヒマン」で指摘しているように、アイヒマンは「単に上の命令に従っただけの凡庸な官僚で、悪の無思想性、悪の陳腐さを持った人間でしかなく、反ユダヤ主義者でもなかった」わけだ、ヒトラーもそうだったとは言わないが、良くも悪くも1人の人間だった。誰も逆らわず、誰も止められなかった、そして彼が暴走した。
ヒトラーを批判することは安易である。それ以上のことをしたから。けれど、その批判は同時に自分たちにも向けられる。「あの場にいて、止められたか?」と。残念ながら途中で銃殺された側近のように、抵抗しても無駄となる。側近なんだからヒトラーを殺しちゃえばよかったのに…、って思って見ていたが、それは不可能だったのだろう。大半の側近が一度は彼に心を奪われているから。ゲッペルス一家の最後がそれを物語っていた。余りにも残酷だったが、ゲッペルス夫人の意志の固さは尋常じゃなかった。決して手を結ばなかったし。
最後のユンゲ本人のメッセージが心に残った。「若かったというのはいい訳にならない。目を見開いていれば気づけたのだ」。大概そうである。「目を見開いていれば」ね。けど、人は結構目をつむる。いじめが学校だけでなく会社や社会全体で起ころうと、集団的自衛権を無作法で変更しようと、貧困が拡大していようと、パレスティナで暴動が起こっていようと、地震で原発がメルトダウンしていようと。確かに知ろうとしなくてはわからないものばかり。ただでさえ、余裕がない現代社会、自分に関係がなければ「目をつむる」、そちらのほうが幸せだし「平穏」である。しかしその積み重ねに、W.W.2のドイツがあったのではなかったのか。「目を見開く」とは「知ろうとすること」だ、何が起こっているかを。それを改めて考えさせられた。
残念ながら授業では使えなそう。やっぱ「ライフイズビューティフル」かな。