都市と商業の発展
商業の復活
西欧では8〜9世紀は商業が停滞していたとされるが、11世紀になると三圃制や重量有輪犂などによる農業生産力の向上で、余剰生産物の交換を行う定期市が生まれるといった「商業の復活」が始まった。そして十字軍遠征をきっかけに遠隔地商業が展開し、定期市は中世都市に発展していった。
遠隔地商業の拡大と貿易圏の成立
東方貿易においては、ヴェネツィア、ジェノヴァ、ピサなどの海港都市が活動してロンバルディア同盟などを結び、香辛料などの奢侈品や嗜好品をアラブ商人から輸入した。対価としてアウグスブルク産の銀を払い、富を手に入れていった。内陸部のフィレンツェ・ミラノでは毛織物業が発達し、ヨーロッパに流通した。
北海・バルト海では、リューベックを盟主とし、ハンブルクやブレーメンも加盟するハンザ同盟が中心となって、木材、海産物、毛皮などの生活必需品をもたらした。またフランドル地方のガン・ブリュージュを拠点に、西欧産の毛織物、葡萄酒が取引された。
13〜14世紀、北海・バルト海貿易圏と地中海貿易圏を結ぶ地点として、シャンパーニュ地方に大規模な定期市が生まれた。その後地中海商人が直接北と取引を始め、14〜15世紀に大市はフランドル地方のブリュージュに代わった。また地中海と内陸を結ぶアウグスブルクが繁栄し、ライン川・マイン川付近のニュルンベルクやフランクフルト、マインツなども発達した。
都市の特権
発達した都市は領主の重税に抵抗し、自治特許状を貨幣で買い取った。こうした自治都市は独自の都市法を持ち、市参事会を開いて市政を運営して、領主の徴税や裁判から独立していった。北イタリアでは都市貴族の力が強く、周囲の農村を包含する都市共和国が発達した。ドイツでは領主から自治権を獲得して帝国直属となる帝国都市が出現した。これに対し南フランスやイギリスでは両主権が強く、自治権が弱かった。
都市は自治を守るため都市同盟を結成して、皇帝や諸侯の権力に対抗した。北イタリアのロンバルディア同盟(1167)は、皇帝フリードリヒ1世のイタリア政策に対抗するもので、皇帝軍を撃破して北イタリア諸都市の自治権を獲得した。ドイツ内では1254年治安維持のため、ヴォルムスやマインツがライン都市同盟を結成した。また商権確保のためにはハンザ同盟が結成された。