教員のプロ2(クローズアップ現代を見て)

NHK クローズアップ現代
 クローズアップ現代大阪府教育の試みをやっていたので、それの感想も含めて。
 大阪では教育改革が進んでいるようだ。エリート教育と学習支援教育、それにいじめ防止、これらを教育長が中心となって、スピード感のある改革を進めている。これが人々にいろいろな影響を与えているという話。詳しくは上記リンク参照。
 まずエリート教育の部分。これは日本の高校では飛び級がないので、遠からずこういった教育は広がっていくと思われる。現在も進学校と指導困難校で飛び級ではないにせよ、まったく違った授業が行われているので、学力に応じた指導というのはある意味しょうがない。学習指導要領を越える授業というのも認められている。
 逆に学習支援。こちらはまだ学習指導要領では認められていなかったと思う。最近、細かくみていないので自信はないが。番組では中2から数学がわからなくなった?と生徒がいっていたが、正直それはむしろ理解しているほう。実際の指導困難校では小学校でつまづいてしまっているケースが多い。感覚だと分数の計算は8割近くがわかっていない。数学の授業の中でそこをフォローすることは難しく、放課後の課外などでフォローしていた。これは高校だけにとどまらず、中学校から学習支援を授業などでフォローできるようになると一番いい。中学校の最初から授業の内容がわからないと、劣等感を嫌という程与えられ、学習意欲はなくなるから。
 番組ではいろいろと意見が述べられていたが、私が気になった点は、まず高校の学習指導にどの位の教育リソースが割り当てられているかということ。学習面は数字に出やすく、評価がわかりやすい。しかも地域の要望も強い。しかし現実は高校で学習支援を拡充するより、就学前の教育支援のほうが効果が高いそうだ。けど、そういった取り組みはあまり放送されていなかった。
 二点目は学習といじめ防止が流行なのか、放送されていたが、それ以外の生徒指導面はあまり放送されていなかった。教育委員会のHPでも少ししか扱われていない。生徒指導は効果が薄く、出たとしても時間がかかる。間違いなく、スピード感なんかでない。例えば学校には校則があるが、これを守るという規律はどうするのか。守らないならなくていいわけで。それ意外でも目上の人に対する態度や立ち振る舞い、TPOなど、社会にでて必要とされる資質をどう身につけるのか、そういった観点は皆無だった。以前勤めていた学校は、就職率が非常に高く、会社からも高評価だった。それは規律や態度、TPOなどをしっかり教えていたからだと思う。もちろんその分「イエスマン」的なところはあるが、不満があっても我慢して働き、それをうまく改善していくなど、社会適応力は高かったと思う。離職率はあまり調べにくいらしく数値として出ていないが、そういうのを制度として作成し、各学校ごとの離職率を調べたら、中々おもしろいと思う。「他校生に比べると簡単にやめないで働いてくれる」なんて言ってくれた会社もあった。
 三点目はいじめ対策のマニュアル化だ。いじめ対策の責任者を明確にし、マニュアルに乗っ取って指導する。まずいじめをどう防ぐかだが、個人的には各教員間の連携にかかっていると思う。担任以外の授業でいじめが起こった場合や、昼休みにこっそりと行われている場合など、起こる場面は流動的で突発的だ。それを把握し、教員が連携をとって防ぎ、目を光らせないといけない。もちろん最後は担任なのだが、何より大切なのは連携。それをどう「マニュアル化」し、それを踏まえて「臨機応変」に対応するかだと思う。いじめ対策は基本「臨機応変」だと思う。マニュアルだと対応が一律になり、猶予がない。思春期の生徒にとっては、家庭や学校生活での背景、生徒の現状などを踏まえ、臨機応変に対応するしかない。一時的にすさんでしまった生徒にマニュアル通りの対応をすると、一層すさみ、下手したら戻ってこないと思う。もちろん被害者への対応は充実させるべきだが、加害者も生徒である。これがいじめの難しいところ。どこまで許せるのか、これは学校、教員、生徒、などなど、それぞれで異なってくると思う。
 こうやって見ると、二点目に書いた生徒指導が一番スピード感のある対応ができません。これが教員の仕事だとすると、どう評価すべきなんでしょうか。三点目のいじめ対策は、マニュアルからはずれると評価されないのでしょうか。どうなんだろ。
 いろいろ書いたけど、まず大阪府の取り組みは基本的に素晴らしいと思います。それは「取り組み始めたから」です。現状、何かを変えないといけないわけで、それを始めたことは意味があると思います。ただ、複眼的に考察し、実施していかないと、あとあと大変そうですが。大阪府の教員は大変です。